先日静岡にある実家に帰宅したとき、
お隣さんの庭にそびえ立つ高さ6メートル程の樹木を発見。
あんな木、今まであったっけ?
母が言うには「60年かけて咲いたリュウゼツランの花茎だよ。
もう花は散っちゃったけどね。」
…ん???
聞くと、約60年前に庭に植えたリュウゼツランという植物に
昨年初めて花が咲いたらしい。
樹木に見えたものは木ではなく花の茎だったのだ。
それにしてもでかい!
リュウゼツラン(竜舌蘭)は郊外にある住宅の庭先などで
ときどき見かけるアロエに似た植物で、
成長が遅く花を咲かせるまでに数十年かかるらしい。
あまりの成長の遅さに100年に一度開花すると誤認されたことから、
海外では“century plant”(センチュリープラント、世紀の植物)
という別名があるほどだ。
そして開花するとその株は枯れてしまい、周りに子株が残る。
今まで見たことのない光景に感動してしまった私は
どうしても詳しい話を聞きたくなって
まるで吸い込まれるようにお隣のおじさんを訪ねると、
嬉しそうに経緯を話してくれた。
で話をまとめると、そのリュウゼツランはおじさんが幼少の頃に
お祖父さんと一緒に庭に植えたもので、
正確にはアオノリュウゼツランという品種だそうだ。
その後ゆっくりと時間をかけて幅2~3メートルにまで育ち、
(この段階でもかなり迫力のある見た目だ)
植えてから約60年たった昨年の夏、
何の前触れもなく中心からまるで筍のように
花茎が伸び初め、約2か月かけて6メートル程になると
一斉に黄色い花が咲き始めたとのこと。
おじさんはもう70代だ。
集落を見下ろす高台にあるおじさんの家に咲くその花は、
私の実家からはこんなふうに見えていたそうだ。
開花したときには地元のテレビや新聞などにも紹介されて
ちょっとした開花フィーバーだったらしい。
品のある控えめなおじさんだが
当時の様子を少し興奮気味に話す姿が可愛かった。
帰り際、「実際に花が咲いているところを見たかった~~」と、
ぶーぶー文句を言う私を見かねたのか、
枯れてしまったリュウゼツランの周りに残る
元気な子株を持たせてくれた。
澄んだ青緑色をした可愛いリュウゼツラン。
何十年か後の、巨大な竜の舌のような荒々しい姿も、
天高く伸びる花茎も想像できない。
だいいち、我が家は住宅密集地で庭は猫の額ほど。
果たして息子は開花を見ることができるのか。